はじめに
野球ファンには朗報です。メジャーリーグベースボール(MLB)のロサンゼルス・ドジャースで、岩手出身の若手右腕 佐々木朗希選手 がクローザー(試合を締める投手)としての重要な役割を担い始めています。
当初は先発投手として期待されていた彼が、球団の状況と彼自身の適性を踏まえて「勝負所を託す役割」へとシフトされたこの起用は、まさに “配置最適化” の生きたモデルです。
本稿では、この佐々木選手のクローザー起用を題材に、一般企業における人材配置のヒントを解説します。
佐々木選手のクローザー起用が語ること
起用の背景:計画通りではなかった変化
- ドジャースでは、シーズン当初、左腕ターナースコット(Tanner Scott)がクローザーとして期待されていました。
- しかしスコットはシーズン中の成績不振・セーブ失敗の多発などで信用を落とし、ポストシーズンからロースター外に置かれることになります。
- そんな中、ロバーツ監督からシーズン終盤〜ポストシーズンにかけて佐々木選手はクローザーを任されることになりました。
このように、元々の設計通りには運ばないこともありますが、人材の特性とチームの緊急要件を見て柔軟に役割を変えることが重要になります。
適応と実績:新しい配置で結果を出す
- 佐々木選手は、救援(リリーフ)という新しい登板形態のなかで無失点投球を続け、クローザーとして信頼を獲得しています。
- ドジャース監督デーブ・ロバーツも、「彼は現在の主な選択肢だ」と発言し、クローザーとして機能していると評価。
- ただし、「毎試合すべてを締める」と断言はせず、運用のバランスを保つ設計にしています。
つまり、新しいポジションに対して責任を与えつつ、長期を見据えた使い方(先発と異なる登板間隔・準備への順応・対戦相手に合わせた他投手との併用)を設計している点が巧みです。
企業における「佐々木型配置最適化」への応用
以下は、佐々木選手のクローザー起用をヒントに、一般企業で実践できる配置最適化の考え方と手法です。
ドジャースでの対応 | 企業に置き換えると |
---|---|
期待されていたクローザーが不振 → 別の起用を検討 | 要職担当者が成果を出せない場合、代替配置を検討 |
若手にクローザー起用のチャンス | ポテンシャル人材にチャレンジ業務を与える |
役割を変えながらも最適な起用頻度を調整 | 配置転換後も負荷を見ながら最適な稼働設計を行う |
評価・信頼をもとに使い方を拡大 | 成果に応じて任せる領域・影響力を段階的に広げる |
1. 潜在能力と適性を見極める
佐々木選手は元々先発投手でしたが、救援投手としての強み(奪三振能力・集中力)を買われました。企業でも、現業務だけでなく、個人の強み・素養を把握した上で、“別の役割”でも活躍できるかを見立てる必要があります。
2. 小さな実験運用から始める
ドジャースでは最初から毎試合締めを任せたわけではなく、段階的に使われ始めています。企業でも、最初から全面的に配置を変えるのではなく、一部プロジェクトや試験的ミッションで成果を見る方式がリスクを抑えられます。
3. フィードバックと調整を重ねる
佐々木選手の場合でも、監督は「毎試合使うわけではない」と述べて運用の余地を残しています。これは疲労管理や他投手とのバランスを考慮した設計です。企業でも、新配置後のパフォーマンス・疲弊・モチベーション・チーム影響をモニタリングしながら、柔軟に調整するべきです。
4. 評価制度・報酬制度との連動
ササキがクローザーとして実績を残せば、信頼度・起用頻度が上がるように、企業でも成果に基づいた昇格・報酬・裁量権拡大などとリンクさせることで、配置変更に納得感を持たせられます。
5. 複数起用候補・バックアップ設計
ドジャースも、クローザー役を完全に一人に集中させず、他のリリーフ投手との併用を想定しています。企業でも、異動配置時には常にバックアップや代替人材を育てながら運用すべきです。
まとめ:未知のポジションで力を発揮できる組織をつくる
佐々木選手のクローザー起用は、当初の想定を超えた配置転換が、結果的にチームの勝利に資する形となった好例です。
企業でも同じように、
- 想定外の配置変更を恐れず
- 適性と潜在力を見て人材を再配置し
- 段階導入・評価・調整を繰り返し
- 評価・報酬とリンクさせながら運用
できる組織こそ、変化の激しい時代に強い組織になります。
「この人、今とは違うポジションのほうが活きるかも」――
そんな発想と設計で、“組織のクローザー起用”に挑む価値は十分にあるはずです。
※一部弊社研究員の見解と異なる場合がございます。あらかじめご了承ください。


コンサルタント
過去30年間にわたり、社会保障政策および人的資源管理に関する100を超えるプロジェクトを企画・主導。そこで培った経験と知見をベースに、誰もが自己実現と豊かさを享受できる社会の実現をめざして、人財分野における情報発信や提言、ソリューション開発を進めています。