用語の定義
カスハラ(カスタマーハラスメント、Customer Harassment)とは、顧客や取引先などの立場を利用して、 従業員やスタッフに対して暴言・威圧・過度な要求・人格否定などの不当な言動を行う行為を指します。 パワーハラスメント(職場内の地位や権限を背景としたハラスメント)に対し、 カスハラは「外部の関係者によるハラスメント」として位置づけられます。
近年では、悪質なクレーム対応や暴言・SNS上での誹謗中傷など、 企業の業種を問わず発生しており、従業員のメンタルヘルス悪化や離職の要因となるケースも増えています。 厚生労働省は2022年に「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を公表し、 企業に対して予防・対応・再発防止の取り組みを求めています。
注目される背景
社会的認識の高まりと法的整備
これまで「お客様は神様」という文化が根強く残っていましたが、 従業員の人権や安全を守る観点から、「不当な顧客行動には毅然と対応する」方向へ社会の認識が変化しています。 2020年の改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)に基づき、 職場環境を害する外部からの言動も企業の安全配慮義務の範囲に含まれるとの考え方が広がっています。
従業員のメンタルヘルスと人材定着への影響
カスハラ対応は、従業員の心理的負担やストレスの大きな要因の一つです。 特に接客・営業・サポート部門では、理不尽な要求や暴言が長期的に続くことで、 メンタル不調や離職につながる事例が報告されています。 企業にとっては、従業員を守る体制づくりがエンゲージメント維持と人材確保の観点からも重要です。
企業のリスクマネジメントとブランド保護
カスハラを放置すると、従業員の生産性低下だけでなく、 SNSやメディアを通じた企業イメージの毀損にもつながる可能性があります。 そのため、企業は「従業員を守る姿勢」を明確に示す必要があり、 具体的なガイドライン策定やマニュアル整備、警察との連携、研修の実施などが進んでいます。
ダイバーシティ経営との関係
多様な人材が働く組織において、顧客からの差別的・侮辱的な発言は重大な問題です。 カスハラ対策は、従業員の多様性を尊重し、安心して働ける環境を守る 「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」の実践にも直結しています。
関連する用語
- パワーハラスメント(Power Harassment):職場内の優位な立場を利用した嫌がらせ。カスハラは外部発生型のハラスメント。
- セクシュアルハラスメント(Sexual Harassment):性的言動によって不快感や職場環境の悪化を引き起こす行為。
- 職場環境配慮義務(Duty of Care for Workplace Environment):企業が従業員の安全・健康を守る法的責任。カスハラ対応も含まれる。
- メンタルヘルス対策(Mental Health Management):ストレスや心理的負担を軽減し、心の健康を守る取り組み。
- クレーム対応マニュアル(Complaint Handling Manual):顧客対応時の基準・対応フローを定めた社内文書。カスハラ防止の基礎資料。
カスハラは「顧客対応の問題」ではなく、「企業の労務・人権・組織文化の課題」です。 従業員を守る明確な方針と対応体制を整備し、企業として毅然とした姿勢を示すことが、 持続可能な職場環境とブランド価値を守ることにつながります。