用語の定義
セレンディピティ(Serendipity)とは、「偶然の出会いや予期せぬ発見が幸運な成果につながる現象」または「そうした偶然を引き寄せる力」を指します。 英語圏では「思いがけない幸運」や「偶然の発見能力」と訳され、科学・経営・人材育成・イノベーション領域で頻繁に用いられます。 偶然の機会をただの偶然で終わらせず、価値ある結果へとつなげる「構想力」「感受性」「行動力」の三要素が鍵とされます。
この概念は18世紀にイギリスの作家ホレス・ウォルポールによって提唱されたもので、 彼の創作物『セレンディップの三人の王子』の物語に由来します。 人事・組織領域においては、「偶然を活かす組織風土づくり」「人材の偶発的学習」などの文脈で注目されています。
注目される背景
イノベーション創出との関係
不確実性が高まる現代では、計画的な戦略だけでは新しい価値を生み出すことが難しくなっています。 セレンディピティは、偶然の出会いや発想を起点に新しい知識・技術・事業を生み出す 「偶発的イノベーション(accidental innovation)」の重要な要素とされます。 オープンイノベーションや異業種交流、社内越境活動などは、この概念を組織的にデザインしたものとも言えます。
人材育成とキャリア開発への応用
キャリア理論の分野では、セレンディピティは「偶発的学習(Planned Happenstance)」の概念と結びついています。 これは、偶然の出来事をキャリア成長の機会と捉え、主体的に活用していく考え方です。 人事部門においては、社員が偶然の出会いや体験を通じて新しい視点や能力を得るよう、 越境学習・副業・社外活動支援などを設計する動きが広がっています。
心理的柔軟性と組織文化の関係
セレンディピティを発揮するためには、失敗を恐れず挑戦する心理的柔軟性と、 多様な考えを受け入れる組織文化が不可欠です。 形式や手順にとらわれず、自由な発想や偶然の交流を許容する環境こそが、 新たなアイデアや価値創出の土壌となります。 この点で、心理的安全性やエンゲージメントの高い組織は、セレンディピティが生まれやすい組織とも言えます。
デジタル時代の偶然性のデザイン
リモートワークやAI活用が進む中で、偶然の会話や発想の「余白」が減少しています。 そのため、企業は「偶然の出会いを意図的に設計する」仕組み―― たとえば、オンラインランチ、社内マッチングツール、アイデアピッチイベントなどを導入し、 デジタル環境でもセレンディピティを再現する取り組みを強化しています。
関連する用語
- 偶発的学習(Planned Happenstance):偶然の出来事をキャリア成長の契機と捉える学習理論。セレンディピティと密接に関連。
- オープンイノベーション(Open Innovation):組織の枠を超えて外部との協働を通じて新しい価値を創出する手法。
- 心理的柔軟性(Psychological Flexibility):不確実な状況においても価値観に基づき柔軟に行動できる能力。
- 越境学習(Cross-boundary Learning):組織や専門領域を越えて他者と交流し、新たな知識や視点を獲得する学習活動。
- 偶発的イノベーション(Accidental Innovation):偶然の出会いや発見を契機として生まれる革新的な成果。
セレンディピティは、「偶然を活かす力」であり、 創造性と柔軟性が求められる現代の経営・人事において欠かせない視点です。 組織が偶然の出会いを生む「場」と「文化」を設計できるかどうかが、 未来のイノベーション力を左右するといえます。