組織開発

「Z世代はやる気がない」は本当か

目次

データで見る働き方の変化と誤解

「Z世代はワークライフバランスばかり重視する」「最近の若手は仕事への熱量が低い」。こうした言葉は、いまや日常的に聞こえてくる。しかし、これらは本当に“世代の特徴”なのだろうか。実は、仕事満足度や離職意向、働く意欲などを世代ごとに比較した研究では、「明確な違いは見えない」という結果が続いている。若手の行動変化を“世代の性質”と捉えてしまうと、企業が本来向き合うべき課題が見えにくくなる。本稿では、研究で得られている知見を手がかりに、若手の行動がどうして変化して見えるのか、そして企業がどこを改善すべきかを整理する。

本当の問題は「世代」ではなく「職場の仕組み」

若手の行動の変化を「Z世代だから」と説明するのは、直感的には分かりやすい。しかし、研究結果を見る限り、「世代ごとに価値観が大きく違う」という根拠は乏しい。むしろ、仕事の中身、裁量の大きさ、評価の仕組み、成長機会など、職場の「設計」そのものに起因することが多い。

若手を「最近の若者は…」と評してしまうと、企業が改善すべき構造的な問題が見えなくなる。職場環境の整い方や働き方の柔軟性が不十分であれば、どの世代でも働きづらくなるはずである。世代別の特徴に目を向けるより、職場の設計そのものを問い直すことが企業にとって重要だと考えられる。

なぜ「世代差」に見えてしまうのか

読者の中には、「そうは言っても、やはり若手と高齢層では働き方の感じ方が違う」と思う人もいるだろう。この感覚はまったく自然である。若手は新しい制度や働き方に触れる時間が長く、まだ職場文化に深く染まっていない。一方、高年齢層は長年続けてきた働き方や慣習をすぐに変えるのは難しい。

そのため、新しい働き方や価値観に対する反応速度が世代間で異なり、結果として「若手は柔軟」「ベテランは保守的」と見える。この「見え方」は事実である。しかし、それは世代の性質の違いではなく、経験の積み上げと環境との接触量の違いが生むものである。

行動科学では、長く続けた行動や考え方を変えることに心理的負荷がかかる現象を「パス依存性」と呼ぶ。高年齢層ほど既存のやり方が定着し、変えるコストが高くなるため、新しい働き方への反応が遅く見える。

つまり、

若手の変化の早さ=世代の性質ではなく、環境への適応コストの低さ

高年齢層の変化の遅さ=性質ではなく、行動の定着度の高さ

という構造がある。この違いが「世代差」というラベルを生んでいるだけである。

こうした「見え方」と「本質」がすり替わると、企業は構造的な課題ではなく「世代の特性」に解決策を求めてしまう。これは、根本的な改善にはつながりにくい。

世代論では説明がつかない理由

● データが示す「差の小ささ」

複数の研究で、世代ごとの差はきわめて小さいことが確認されている。仕事満足度や離職意向などの指標でも、意味のある大きな差は見つかっていない。世代間で異なる働き方を前提とする議論は、データの裏付けを欠いている。

● 「世代ラベル」は研究者によってバラバラ

ある研究では1995年生まれがZ世代に含まれ、別の研究では含まれない。世代区分が研究ごとに異なるのは珍しくない。こうした状況では、特定の世代を対象にした施策を組み立てることに慎重さが求められる。

● 行動の違いは社会環境で説明できる

働き方改革や労働市場の変化によって、働く環境そのものが変わっている。若手がワークライフバランスを重視するのは「世代の価値観」ではなく、社会の変化に適応した結果である。この変化は、時代の影響が特に強く出る若年層において顕著に見えるだけである。

「Z世代対策」ではなく「働き方の設計」が本丸

若手の行動は確かに変化している。しかし、その原因を「世代」に求めてしまうと、企業が取り組むべき課題を見誤る。改善すべきは、仕事の裁量、評価制度、成長機会、働きやすさといった職場の構造である。

どの世代にも働きやすく、成果を出しやすい仕組みになっているか。ここを問い直すことが、若手の離職防止にも、組織全体のパフォーマンス向上にも直結する。

世代の違いではなく、職場の仕組みの違いが、人の行動を大きく左右する。世代論より構造を見つめ直すことが、企業が未来に備えるための最短ルートである。

参考文献

※本記事は、執筆者個人の見解に基づき作成されたものであり、当社の統一的な見解を示すものではありません。

※本コンテンツの作成にあたり、一部 ChatGPT Enterprise を利用しております。

著者情報

コンサルタント

大村 秀 大村 秀

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